REIT市場にいま何が起きているのか
不動産投資信託(REIT)の値動きに変化が出ています。J-REIT市場全体を示す東証REIT指数は、2026年6月5日に年初来安値となる1,751.79ポイントをつけた後に反発し、7月15日には1,846.96ポイントで取引を終えました。6月の安値からおよそ5%戻した計算です。
その一方で、日本銀行は2026年6月の金融政策決定会合で政策金利を1.00%へ引き上げています。「金利が上がるとREITは下がる」というのが一般的な理解ですから、教科書どおりであれば逆風が強まる場面のはずです。それにもかかわらず、投資マネーは戻りを試し始めました。
コワニこの記事では、次の3点をREIT初心者の方に向けて整理します。
- REITが金利上昇に弱いといわれる仕組み
- それでも今回、相場が反転した3つの理由
- 初心者がチェックすべき指標と、実際の買い方


そもそもREITとは?30秒で押さえる基本
少額から不動産オーナーになれる商品
REIT(リート)は、多くの投資家から集めた資金でオフィスビルやマンション、物流施設などを購入し、そこから生まれる収益を投資家に分配する金融商品です。日本の証券取引所に上場しているものはJ-REITと呼ばれ、株式と同じように証券口座から売買できます。
実物の不動産投資には数千万円単位の資金が必要ですが、J-REITなら数万円から十数万円程度で買える銘柄が中心です。入居者対応や修繕の手配といった手間もかかりません。
分配金の原資は「賃料収入」
REITの分配金は、保有物件のテナントが支払う賃料から、管理費・修繕費・借入金の利息などを差し引いた残りが原資になります。ここが株式の配当と大きく異なる点です。企業業績のように大きく振れにくい半面、賃料と金利という2つの要素に強く左右されます。
またREITは、利益の大半を分配すれば法人税が実質的にかからない仕組みになっており、利益をため込まずに投資家へ還元する設計です。これが利回りの高さにつながっています。
東証REIT指数とは何を表すのか
東証REIT指数は、東京証券取引所に上場する全REITを対象とした時価総額加重型の指数です。2026年6月末時点の上場銘柄数は58、市場全体の時価総額は約15兆7,650億円でした。J-REIT市場全体の体温計と考えるとわかりやすいでしょう。


押さえておきたい3つの用語
- 投資口価格:REITにおける「株価」にあたるもの
- 分配金利回り:年間予想分配金 ÷ 投資口価格
- NAV倍率:保有不動産の純資産価値に対して割安か割高かを測る指標(株式のPBRに相当)
なぜREITは金利上昇に弱いといわれるのか
理由①:借入コストの上昇が分配金を圧迫する
REITは投資家から集めた資金だけでなく、金融機関からの借入も組み合わせて物件を購入しています。この借入への依存度を示すのがLTV(有利子負債比率)です。各REITが運用方針のなかで目標水準を定めており、現状はおおむね55%未満に収まっています。40〜50%台の銘柄が多く見られます。
金利が上がれば支払利息が増え、その分だけ投資家に回る分配金は目減りします。REITが「金利に敏感な商品」といわれる、もっとも直接的な理由です。


理由②:国債利回りとの差(イールドスプレッド)が縮まる
投資家にとってREITは、安定した利回りを狙う商品です。そこで比較対象になるのが、値動きの小さい国債です。
新発10年国債の利回りは2026年7月初旬時点で2.6〜2.7%程度まで上昇しました。国債でも2%台後半が得られるのであれば、価格変動リスクのあるREITにはそれ以上の上乗せが求められます。投資家が求める利回りが上がるということは、投資口価格が下がる方向の圧力になります。
理由③:不動産そのものの評価額が下押しされる
不動産の価格は、大まかにいえば「年間の純収益 ÷ 期待利回り(キャップレート)」で決まります。金利が上がると投資家の求める期待利回りも上がるため、同じ賃料収入でも計算上の物件価格は下がることになります。
このように金利上昇は、①借入コスト、②他資産との比較、③物件評価額という3つの経路でREITに効いてきます。東証REIT指数が2026年1月の年初来高値2,067.93ポイントから6月安値まで15%超も下落した背景には、この構図がありました。



それでも反転した3つの理由
理由①:借入が長期・固定化され、影響が一度に出ない
政策金利が上がっても、REITの支払利息が翌日から跳ね上がるわけではありません。多くのJ-REITは金利上昇に備えて借入の長期化・固定化を財務方針に掲げています。実際の開示を見ると、固定金利比率が8割から9割を超え、平均残存年数が3〜7年程度という銘柄が多く見られます。
つまり金利の影響は、借り換えのタイミングで少しずつ表面化していきます。「利上げ=ただちに減配」ではないという構造が、あらためて意識され始めました。
理由②:賃料の引き上げが利払い増を上回り始めた
より重要なのがこちらです。オフィス仲介大手の三鬼商事によると、東京ビジネス地区(千代田・中央・港・新宿・渋谷の5区)の2026年6月時点の平均空室率は1.99%となり、2020年6月以来の1%台まで低下しました。平均賃料は坪あたり22,993円で、前年同月比10.14%の上昇です。賃料の上昇は29カ月連続となっています。
空室が減れば、貸す側の立場は強くなります。空室率が2%を割り込む水準は、貸し手優位がかなり強まっていることを示しています。契約更新のたびに賃料を引き上げられる環境であれば、利払いの増加を賃料収入の増加で吸収できるという理屈です。
理由③:割安感が買いを呼び込んだ
2026年6月末時点のJ-REIT市場全体の予想分配金利回りは5.065%でした。過去数年はおおむね3%台後半から4%台で推移していたため、歴史的に見て高い水準です。
もう一つの指標であるNAV倍率も、2026年6月末時点で0.84倍でした。保有不動産の価値に対して16%ほど安く評価されている計算になります。1倍割れは2022年12月以降ずっと続いており、しかも今回は不動産価格そのものが下落していないなかでの1倍割れです。売られすぎではないかという見方が広がりました。
「金利ある世界」への適応とは具体的に何か
各REITも手をこまねいているわけではありません。実際に進んでいるのは、次のような取り組みです。
- 含み益の出ている物件を売却し、利回りのより高い物件へ入れ替える
- 売却益を分配金の下支えに充てる
- 借入の返済期限を分散させ、固定金利の比率を高める
こうした運用努力が評価され始めたことが、今回の反発を支えています。
初心者がREITを見るときの5つのチェック指標
| 指標 | 何がわかるか | 見方の目安 |
|---|---|---|
| 分配金利回り | 投資額に対し年間いくら受け取れるか | 市場平均と比較する。極端に高いときは理由を確認 |
| NAV倍率 | 不動産価値に対して割安か割高か | 1倍割れは割安の目安。低いほど良いとは限らない |
| LTV(有利子負債比率) | 借入への依存度と金利耐性 | おおむね55%未満。高いほど金利の影響を受けやすい |
| 固定金利比率・平均残存年数 | 金利上昇の影響がいつ出るか | 固定比率が高く残存年数が長いほど当面の耐性は高い |
| 用途とスポンサー | 収益の安定性と物件の取得力 | 用途ごとに景気感応度が異なる。スポンサーの信用力も重要 |
用途による性格の違いも押さえておきましょう。オフィスは景気と賃料市況の影響を受けやすく、住宅は比較的安定的です。物流施設は長期契約が中心で収益が振れにくく、ホテルは業績連動型の賃料が多いため変動が大きくなります。
なお、分配金利回りの高さだけで選ぶのは避けてください。投資口価格が下がった結果として利回りが高く見えているだけ、というケースを拾ってしまうためです。必ず複数の指標を組み合わせて確認しましょう。
REITの買い方 3つの選択肢
①個別REIT
証券口座から銘柄を指定して売買します。用途や財務内容を自分で選べる点が魅力ですが、1銘柄あたり数万円から数十万円の資金が必要で、分散するには複数銘柄を買う必要があります。
②REIT ETF
東証REIT指数などに連動する上場投資信託です。1本で市場全体に分散でき、コストも低めです。銘柄を選ぶ手間がかからないため、初心者がまず検討しやすい選択肢といえます。
③REIT投資信託
金額を指定して購入できるため、月々1,000円といった少額からの積み立てにも向いています。ETFのように取引時間中の値動きを見て売買する必要がなく、自動積立の設定さえしておけば手間はかかりません。ただし信託報酬はETFよりやや高めの傾向があり、毎月分配型の商品では分配金に元本の払い戻しが含まれる場合もあります。購入前に交付目論見書で費用と分配方針を確認しておくと安心です。
| 少額性 | 分散のしやすさ | 銘柄選択の自由度 | |
|---|---|---|---|
| 個別REIT | △ | △ | ◎ |
| REIT ETF | ○ | ◎ | △ |
| REIT投資信託 | ◎ | ◎ | △ |
NISAを使う場合、個別REIT・ETF・投資信託のいずれも成長投資枠での購入が可能です。ただし、つみたて投資枠は対象商品が限られる点に注意してください。
初心者が注意したいリスクと心構え
反発したからといって、上昇が続くと決まったわけではありません。押さえておきたいリスクは主に4つです。
金利の再上昇:日銀は2026年7月末にも金融政策決定会合を控えています。追加利上げがあれば、再び調整局面に入る可能性があります。
増資による希薄化:REITは物件取得の際に新規の投資口を発行することがあります。1口あたりの分配金が一時的に薄まる場合があります。
空室・災害リスク:テナントの退去や地震・水害による物件の毀損は、賃料収入に直結します。
利回りの罠:高利回り銘柄には、それ相応の理由があることも少なくありません。



REITは分配金を軸に中長期で保有する商品です。日々の値動きに一喜一憂せず、賃料と金利という2つの軸で判断する姿勢が向いています。なお本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。


まとめ:金利上昇局面のREITとどう向き合うか
- REITは借入コスト・国債との比較・物件評価という3経路で金利の影響を受けます
- ただし借入は長期固定が中心で、賃料上昇が利払い増を吸収し始めています
- 分配金利回りとNAV倍率から見た割安感が、今回の反転を後押ししました
「金利が上がったからREITはだめだ」という単純な図式では、いまの市場は説明できません。まずは分配金利回りとNAV倍率、そしてLTVの3つから、気になる銘柄をのぞいてみてはいかがでしょうか。
【参考データの時点】東証REIT指数は2026年7月15日終値(日本経済新聞)、分配金利回り・時価総額・銘柄数は2026年6月末、NAV倍率は2026年6月末(ARES)、オフィス市況は2026年6月末時点(三鬼商事)。指数・金利は日々変動するため、最新値をご確認ください。








