金利上昇と転売規制のダブルパンチ、東京都心マンション投資の今後を読む

東京都心のマンション価格は、ここ数年にわたって上昇を続けてきました。その背景には、実際に住むための購入だけでなく、値上がり益を狙った投機的な取引の存在があるとかねて指摘されてきました。

その実態が、国土交通省による初めての大規模な調査によって数字として示されました。同時に、業界団体による転売抑制の動きと、日本銀行による段階的な利上げという二つの逆風が、投資用不動産の世界に吹き込んでいます。

この記事では、公表されたデータをもとに、いま東京都心のマンション市場で何が起きているのか、そしてこれから投資を考える方が何を押さえておくべきかを整理していきます。

もくじ

東京都心の新築マンションで急増する「短期売買」の実態

国交省調査が明らかにした転売比率9.3%という数字

国土交通省は2025年11月25日、不動産登記情報を活用した新築マンションの取引に関する調査結果を公表しました。法務省から受領した登記情報と民間の価格データを組み合わせ、2018年1月から2025年6月までに保存登記された三大都市圏および地方四市の新築マンション約55万戸を対象とした、これまでにない規模の調査です。

注目を集めたのが、購入から1年以内に売却された「短期売買」の割合でした。2024年1月から6月に保存登記された物件でみると、東京都全体で8.5%、東京23区では9.3%に達しています。前年はそれぞれ5.2%、5.7%でしたから、1年で大きく水準が切り上がったことになります。

なお、ここでいう短期売買とは、所有権の保存登記から1年(365日)以内に移転登記がなされたものを指します。登記情報をもとにした定義であり、転売の目的までは判別できない点は押さえておきたいところです。

コワニ
10戸に1戸が1年以内に売られていたなんて。住まいを探していた身としては、少し複雑な気持ちになります。

なぜ都心ほど短期売買が多いのか

短期売買の割合は、中心部に行くほど高くなる傾向がみられます。千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・渋谷区からなる都心6区は12.2%で、区別では新宿区が19.6%と約2割に達しました。

ただし、この数字の読み方には注意が必要です。国土交通省自身が、その年にどのようなマンションが供給されたか等によって短期売買の割合は大きく変動すると明記しています。実際、都心6区のなかでも千代田区は4.6%、文京区は2.0%にとどまり、区ごとのばらつきは決して小さくありません。単純に「都心なら必ず投機が多い」と読み替えるのは危険です。

とはいえ、都心部のタワーマンションが利便性や街のブランド力から資産価値が落ちにくいと評価され、分譲時の価格を中古市場が上回る状況が続いてきたことは事実です。人気物件では抽選倍率が高騰し、当選そのものに経済的な価値が生じる構造が、短期売買を後押ししてきたと考えられます。

実は「大規模マンション」に集中していた

今回の調査で見逃せないのが、物件規模による違いです。東京23区の専有面積40平方メートル以上の物件を対象に分析したところ、1棟あたりの保存登記数が100件以上ある大規模マンションの短期売買割合は9.9%で、それ以外の3.3%を大きく上回りました。

件数でみると、大規模マンションの短期売買は2024年上期で575件に達し、2023年の181件から3倍を超える伸びとなっています。大規模マンションは対象全体の約6割を占めるにすぎませんが、短期売買件数では8割強を占めていました。

タワーマンションのような大型物件ほど投機的な資金が集まりやすい傾向が、数字として裏づけられた形です。

転売を主導しているのは誰か——海外マネーと国内投資家

海外居住者の取得比率は都心6区で7.5%に

同じ調査では、日本国外に住所がある人による取得状況も明らかにされました。2025年1月から6月に東京都内の新築マンションを取得した人のうち、海外在住者の割合は3.0%、東京23区では3.5%でした。都心6区に限ると7.5%、区別では新宿区の14.6%が最も高い水準です。

東京23区で海外在住者が取得した新築マンションの登記件数は、コロナ禍以前より減少し、近年は年間300件前後で推移しています。国・地域別では、直近では台湾が最も多く、中国、香港がこれに続きます。

ただし読み取りには注意が必要です。不動産登記に国籍を登録する仕組みはないため、日本国内に住所を持つ外国人や海外法人の日本支社を通じた取得は、この調査では把握できていません。

実態は国内投資家による短期売買が中心

海外マネーの流入は増えていますが、短期売買の担い手という観点では話が変わります。2024年1月から6月の東京23区における短期売買のうち、国外に住所がある人による件数は17件で、短期売買全体の1.3%にとどまりました。

価格帯別にみても同様です。都心6区で2023年1月から2024年6月に短期売買された新築マンションのうち、93.8%は2億円未満の物件でした。2億円以上の物件51戸はすべて国内に住所がある人によるもので、国土交通省は国外に住所がある人が高額物件を活発に短期売買している傾向は特に見られないとしています。

「外国人が都心のマンションを買い占めて値段を吊り上げている」という語られ方をしばしば目にしますが、少なくとも今回のデータが示したのは、短期売買の主役は国内の投資家であるという事実でした。

コワニ
外国人が買い占めているとばかり思い込んでいました。数字で見ると、印象がずいぶん変わりますね。

不動産協会による「転売抑制」の自主規制がスタート

引き渡し前の売却活動禁止・購入戸数制限とは

こうした状況を受けて、業界側も動き始めました。一般社団法人不動産協会は2025年11月25日、分譲マンションの投機的短期転売問題への取り組みを公表しています。

対策の柱は三つです。①登録・購入戸数の上限制限、②契約・登記等名義の厳格化、③引渡しまでの売却活動禁止を基軸に、会員各社の判断のもとで順次展開されます。いずれも登録時確認書や売買契約書、重要事項説明書に明示または条項を新設する形で運用されます。

対象は一般公募による販売物件で、対象エリアや導入開始時期、制限戸数の設定といった詳細は各社が個別に判断します。協会は、憲法が財産権を保障するなかで私的財産の処分に制限をかけることは慎重に考えるべき問題であり、所有権が移転した引渡し後の対策には限界があるとの認識も示しています。

大手8社が先行して導入を決定

協会の正副理事長会社である住友不動産、東急不動産ホールディングス、東京建物、野村不動産、阪急阪神不動産、三井不動産、三菱地所、森ビルの8社は、すでに先行して導入を決定しています。業界を代表する各社が足並みを揃えた意味は小さくありません。

背景には、2025年7月18日付で千代田区が協会に対して「一定期間の転売禁止」「購入戸数の制限」を柱とする対策を要請したことがあります。協会は今回の対策がこの要請の趣旨とも合致するとしています。

一方で、協会は価格上昇の主因を土地代や建築費の高騰と供給戸数の減少による需給の逼迫にあるとし、投機的な取引の影響はごく限定的と捉えています。投資家の立場からすれば、契約から引渡しまでに売り抜ける手法が使いにくくなる点が実務上のインパクトとなります。

もう一つの逆風、金利上昇が投資戦略に与える影響

ローン活用型の不動産投資に迫るコスト増

転売規制と並ぶもう一つの逆風が、金利の上昇です。日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除して以降、段階的に利上げを進めてきました。2026年6月16日の金融政策決定会合では、無担保コールレートの誘導目標を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げることが決定されました。政策金利が1%に達するのは1995年以来、約31年ぶりの水準です。

これを受けて大手銀行は短期プライムレートを引き上げ、住宅ローンの変動金利も順次上昇しています。投資用不動産で使われるアパートローンや不動産投資ローンは、家賃収入を返済原資とする事業用ローンという位置づけから住宅ローンより高い金利設定が一般的で、目安は1%台後半から4%前後とされます。

借入を活用して利回りを高める手法は、低金利という前提のうえに成り立っていました。その前提が変わりつつある以上、これまでと同じ計算式で投資判断を下すことはできません。

利回りシミュレーションで見える影響

具体的な数字で確認してみましょう。物件価格1億円、自己資金2,000万円、借入8,000万円を35年元利均等で返済し、年間の家賃収入が350万円(表面利回り3.5%)というモデルケースを考えます。

金利1.5%であれば年間返済額は約294万円となり、家賃収入との差は約56万円が残ります。これが金利2.5%になると返済額は約343万円に増え、差額はわずか7万円まで縮小します。金利3.0%では返済額が約370万円となり、家賃収入だけでは返済を賄えません。

ここには管理費や修繕積立金、固定資産税、原状回復費用、空室期間の損失は含まれていません。これらを加味すれば、金利が1%上がるだけで手元に残るキャッシュフローは容易に消え去ります。購入時の利回りにどれだけ余裕を持たせるかが、そのまま投資の安全性に直結します。

コワニ
金利が1%上がるだけで手残りが消えるとは。想像していたより、ずっと細い綱の上を歩くのですね。

ダブルパンチの時代に、東京都心マンション投資とどう向き合うか

短期売買から中長期保有へ、投資スタンスの転換点

引渡し前の売却活動が制限され、借入コストが上がる。この二つが同時に進む局面は、値上がり益を前提とした投資スタイルにとって明確な逆風です。

一方で、これは市場の性質が変わることを意味してもいます。投機的な資金が一定程度後退すれば、価格形成はより実需に近づいていきます。家賃収入という安定した収益を軸に、中長期で保有して資産を積み上げる考え方の重要性が、あらためて高まっているといえるでしょう。

短期間で大きな利益を得る機会は縮小しますが、賃貸需要の厚いエリアで手堅く運用する投資家にとっては、競合が減るという側面もあります。

これから物件を選ぶ際に押さえておきたい視点

これから物件を検討するのであれば、価格の値上がりを織り込まない前提で採算が成立するかどうかを、まず確認したいところです。売却益がなくても保有期間中の収支が黒字であるか、という視点です。

そのうえで、金利が現在よりさらに1%から2%上昇した場合のシミュレーションを行い、返済に耐えられる水準かを検証しておくことをおすすめします。自己資金の比率を高める、返済期間を工夫する、固定金利を一部組み合わせるといった選択肢も検討に値します。

物件そのものについては、賃貸需要が長期にわたって見込めるかが決定的です。周辺の人口動態、就業先や大学の立地、再開発計画の有無を丁寧に確認しましょう。修繕積立金の水準や管理組合の運営状況など、保有期間中のコストに直結する要素も見落とせません。

まとめ

国土交通省の調査は、東京都心のマンション市場で短期売買が広がっていた実態を、初めて公的な数字で示しました。東京23区で9.3%、都心6区で12.2%、大規模マンションでは9.9%という水準は、市場の一部が投機的な性格を強めていたことを物語っています。

これに対して不動産協会は転売抑制策を打ち出し、日本銀行の利上げは借入コストを押し上げています。値上がり益を狙う短期売買には、二重の逆風が吹いている状況です。

こうした変化は、投資の前提条件が組み替えられていく過程でもあります。市場の熱に流されず、公表されたデータに基づいて冷静に採算を見極める姿勢が、これまで以上に問われる時代になったといえるのではないでしょうか。

なお、本記事は公表資料に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の投資判断を推奨するものではありません。実際の投資にあたっては、ご自身の状況に応じて専門家にご相談ください。

【主な出典】国土交通省「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果」および別紙(令和7年11月25日公表)/一般社団法人不動産協会「分譲マンションの投機的短期転売問題にかかる取組みについて」(2025年11月25日)/日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年6月16日)

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