家賃上昇が続く東京23区、単身向けワンルーム投資は今が好機か

東京23区で、単身者向け賃貸マンションの家賃が上がり続けています。2026年7月27日に公表された6月のデータでは、専有面積30平方メートル以下の平均募集家賃が11万4242円となり、集計を開始した2015年1月以降の最高値を25カ月連続で更新しました。

2年以上にわたって毎月のように最高値を塗り替えているわけですから、一時的な変動ではありません。構造的な変化が起きていると考えるべきでしょう。

こうしたニュースに触れて、「ワンルーム投資を始めるなら今なのではないか」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。家賃が上がるということは、賃貸経営の収入が増えるということだからです。

ただし、判断はそう単純ではありません。収入が増えても、それを上回るコストが同時に増えていれば、手元に残るお金はむしろ減ります。この記事では、家賃上昇の実態と背景を数字で確認したうえで、ワンルーム投資にとっての追い風と、見落としてはいけない逆風の両面を整理していきます。

もくじ

東京23区の単身向け家賃、6月は25カ月連続で最高値を更新

不動産情報サービスのアットホームが毎月公表している「全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向」によると、2026年6月の東京23区におけるシングル向き(専有面積30平方メートル以下)マンションの平均募集家賃は11万4242円でした。前月比で0.9%、前年同月比では12.4%の上昇です。

ここで押さえておきたいのは、この調査でいう「家賃」が賃料だけを指すのではなく、管理費や共益費なども含んだ金額だという点です。入居者が毎月実際に支払う総額に近い数字として読むことができます。

前年同月比12.4%という上昇率は、かなり大きなものです。1年前の2025年6月時点では10万1623円でしたから、わずか1年で1万2000円以上も水準が切り上がったことになります。10万円をようやく超えたと話題になっていた段階から、11万円台が当たり前になったという変化です。

年額に直せば15万円近い差です。給与の伸びがこれに追いつかなければ、単身者の家計における住居費の比重は年々重くなっていきます。

コワニ
更新のお知らせが届くたびに家賃が上がっていて、正直ため息が出ます。給料は変わらないのに。

この動きは東京23区だけのものではありません。同じ調査では、大阪市のシングル向きも2026年5月時点で22カ月連続の最高値更新を記録しています。都市部の単身者向け賃貸市場全体で、同じ方向の変化が進んでいることがわかります。

ただし、ひとつ重要な前提があります。この調査が集計しているのは「募集家賃」であって、実際に契約が成立した「成約家賃」ではありません。募集時点の提示額には貸主側の強気な姿勢が反映されやすく、成約価格はこれを下回る場合もあります。数字を読むときは、この差を意識しておく必要があります。

家賃上昇が止まらない3つの背景

なぜここまで家賃が上がっているのでしょうか。要因は複合的ですが、大きく3つに整理できます。

単身世帯の東京一極集中

第一に、需要側の要因です。総務省の住民基本台帳人口移動報告によれば、2025年に東京都は6万5219人の転入超過となり、都道府県別で最多でした。

進学や就職で上京する若年層は、そのほとんどが単身での住まいを必要とします。転入超過がそのまま単身向け住戸への需要増として現れやすい構造だといえます。加えて、晩婚化や単身高齢世帯の増加により、23区内で暮らす世帯そのものが小規模化する流れも続いています。

もっとも、この転入超過数は前年から1万4066人縮小しています。流入の勢い自体はやや弱まっており、需要が今後も同じペースで積み上がり続ける保証はないという点は、冷静に見ておくべきでしょう。

建築費の高騰が新築の家賃を押し上げる

第二に、供給側の要因です。建設物価調査会が公表する建築費指数によると、東京の集合住宅(鉄筋コンクリート造)は2026年3月時点で143.3。2015年の平均を100とした指数ですから、10年ほどで建設コストが4割以上も上がった計算になります。しかも前年同月比では5.5%の上昇で、2026年6月分も前月を上回りました。上昇にはまだ歯止めがかかっていません。

国土交通省の建設工事費デフレーターでも鉄筋造が130台半ばの水準にあり、同じ傾向が確認できます。

資材価格に加え、人手不足を背景とした労務費の上昇も続いています。建設業では時間外労働の上限規制も適用され、工期や人員の確保がコストに直結しやすくなりました。

建てるコストが上がれば、その分は新築物件の賃料設定に反映されます。そして新築の家賃水準が上がれば、周辺の既存物件も「この価格でも借り手がつく」と判断して追随しやすくなります。新築の値付けが市場全体の相場を引き上げていく構図です。

分譲価格の高騰で「買えない層」が賃貸に滞留する

第三に、購入市場からの押し出しです。不動産経済研究所によると、2025年に首都圏で発売された新築分譲マンションの1戸あたり平均価格は9182万円、東京23区に限れば1億3613万円に達しました。

この価格帯を無理なく購入できる世帯は限られます。実際、2025年の初月契約率は63.9%と、好調の目安とされる70%を2年連続で下回りました。購入に踏み切れない層が一定数いることの表れといえます。

結果として、本来なら持ち家に移行していたはずの層が賃貸にとどまることになります。賃貸市場の需要が厚くなり、家賃を押し上げる方向に働くわけです。

コワニ
自分の給料ではもう新築は無理だと分かった瞬間、持ち家を諦めかけた自分がいました。

家賃上昇局面でのワンルーム投資、3つの追い風

空室リスクが相対的に低い

家賃を上げても入居者が決まるという状況は、需要が供給を上回っていることの表れです。賃貸経営で最大のリスクは空室ですから、この需給環境は投資家にとって心強い材料といえます。

単身者向けは入退去のサイクルが早いという特徴がありますが、東京23区では次の入居者が見つかりやすい環境が続いています。退去のタイミングで賃料を見直しやすいのも、上昇局面ならではの利点です。

さらに供給面では、23区の多くの区がワンルームマンションの建築に独自の規制を設けています。最低住戸面積の下限を定めたり、ファミリー向け住戸を一定割合設けることを求めたりする内容が中心です。

なかでも豊島区は、狭小住戸集合住宅税という独自の税を設けています。専有面積30平方メートル未満の住戸を9戸以上建築する建築主に対し、1戸あたり50万円を課税するというものです。単身向け住戸を大量に供給しようとすれば、それだけで数百万円規模のコストが上乗せされる計算になります。

こうした規制によって新規供給が増えにくいということは、既存物件の希少性が保たれやすいということでもあります。

インフレ下でも収入が目減りしにくい

物価が上がる局面では、現金の実質的な価値は目減りしていきます。一方、家賃は物価水準に応じて改定できる余地があるため、賃貸不動産はインフレに比較的強い資産と位置づけられてきました。

家賃が前年比で10%を超えて上がっている現在の状況は、この性質が実際に機能していることを示しています。借入をして購入している場合には、インフレによって負債の実質的な重みが軽くなるという側面もあります。

少額から始めやすい

一棟アパートや区分のファミリータイプと比べると、単身者向けワンルームは1戸あたりの取得価格が抑えられます。自己資金や借入枠に制約のある個人投資家にとって、参入のハードルが低い点は依然として大きな魅力です。

複数戸に分けて購入すれば、エリアや築年数を分散させてリスクを抑えるという戦略も取りやすくなります。

投資判断の前に知っておきたい3つの注意点

ここまでは追い風の話です。しかし、家賃の上昇だけを見て投資判断を下すのは危険です。

物件価格も同時に上がっている

利回りは「年間家賃収入 ÷ 物件価格」で決まります。家賃が上がっても、物件価格がそれ以上に上がれば利回りはむしろ下がります。

日本不動産研究所の第54回不動産投資家調査(2026年4月現在)では、東京・城南地区のワンルームタイプの期待利回りは3.6%で、前回調査から0.1ポイント低下しました。投資家が受け入れる利回りの水準は、家賃上昇局面にあっても切り下がっているのが実情です。

つまり、「家賃が上がっているから儲かる」という単純な図式は成り立ちません。売り出されている物件の価格には、将来の家賃上昇への期待がすでに織り込まれている可能性を、常に疑う必要があります。

コワニ
「今が買い時」と煽られるより、こうして冷静な数字で見せてもらえるほうが、ずっと安心できます。

上がっているのは購入価格だけではありません。建築費や人件費の高騰は、退去時の原状回復費用、給湯器やエアコンの交換費用、管理会社への委託費といった支出側にも同じように及びます。区分マンションであれば、管理費や修繕積立金が値上げされる可能性も考えておく必要があります。収入の伸びだけを見て、支出の伸びを見ないシミュレーションは実態から離れてしまいます。

金利上昇が収支を直撃する

日本銀行は2026年6月の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%から1.00%へ引き上げました。約31年ぶりの水準です。市場では、さらなる利上げを見込む声も少なくありません。

不動産投資ローンの多くは変動金利型です。金利が上がれば返済額が増え、家賃収入が増えてもキャッシュフローが改善しない、あるいは悪化することもあり得ます。期待利回りが3%台という水準は、借入金利との差が薄いことも意味します。

借入を前提に投資するのであれば、金利がさらに上がるシナリオを織り込んだ収支シミュレーションが欠かせません。

平均値の上昇が個別物件の上昇とは限らない

23区全体の平均が上がっていても、すべての物件の家賃が上がるわけではありません。平均値は、駅近の築浅物件と駅から遠い築古物件を合わせて均したものです。

さらに注意したいのは、統計上の平均が物件構成の変化にも左右されるという点です。高額な新築物件の募集が増えれば、既存物件の家賃がまったく動かなくても平均値は上がります。

もうひとつ実務的に重要なのは、上昇の恩恵が及ぶのは基本的に新規募集時だという点です。すでに入居している方の賃料についても、借地借家法32条により、周辺相場と比べて不相当となった場合には貸主から増額を請求すること自体は認められています。

ただし、入居者が応じなければそれで決着とはいきません。この種の紛争は民事調停法24条の2により調停前置主義が取られており、いきなり訴訟を起こすことはできず、まず裁判所に調停を申し立てる必要があります。時間も費用もかかるため、実務上は退去後の新規募集で賃料を見直すのが一般的です。相場が上がっているからといって、保有中の物件の収入がすぐに増えるわけではありません。

まとめ:数字の意味を読み解いたうえで判断を

東京23区の単身者向け家賃は、25カ月連続で最高値を更新するという明確な上昇局面にあります。その背景には、単身世帯の流入、建築費の高騰、分譲価格上昇による賃貸需要の滞留という、いずれも短期では解消しにくい構造的な要因があります。

この環境は、賃貸経営にとって確かに追い風です。しかし同時に、物件価格の上昇と金利の上昇という2つの逆風も強まっています。家賃という収入側の数字だけを見て「今が好機」と判断するのは、投資判断としては片手落ちでしょう。

大切なのは、収入・価格・金利の3つを同じテーブルに載せ、自分の資金計画のなかで無理なく成立するかを確かめることです。想定より家賃が伸びず、金利が想定より上がった場合でも耐えられるか。この問いに答えられるなら、需給環境が良好な今は、選択肢を検討する価値のあるタイミングだといえます。

なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の投資判断を推奨するものではありません。実際の投資にあたっては、最新の一次情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。

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