首都圏の賃貸アパート家賃が全エリア・全面積帯で過去最高値——マンション高騰で「割安なアパート」に需要シフト

2026年6月23日、不動産情報サービス大手のアットホーム株式会社が、2026年5月の賃貸アパートの平均募集家賃を発表しました。首都圏(東京23区・東京都下・神奈川県・埼玉県・千葉県)の全てのエリア・全ての面積帯で最高値を更新し、全面積帯での最高値更新は2015年1月の調査開始以降で初めてとなりました。マンションの家賃高騰を背景に、相対的に割安なアパートへ需要が流れ込んだことが要因とみられます。

「家賃が上がっている」というニュースは耳にしても、それが不動産投資にどう影響するのか、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。

コワニ
ニュースを聞いても、自分ごとにならないですよね…

この記事では、初めて不動産投資を検討している方に向けて、今回の家賃上昇トレンドの背景と、投資家にとっての意味をわかりやすく解説します。

アットホームの調査データとは?信頼性の根拠

アットホーム株式会社は、全国の賃貸・売買物件情報を扱う大手不動産情報サービスです(本社:東京都大田区)。毎月公表している「募集家賃データ」は、同社グループのアットホームラボ株式会社が調査・分析を担っており、アットホームが運営するサイトに登録・公開された物件をもとに集計されています。消費者が実際に目にする「今まさに借りられる部屋の家賃」を反映する指標として、投資家や不動産業者に広く活用されています。

なお、この調査における「家賃」とは賃料だけでなく管理費・共益費等を含んだ金額です。また、「2015年1月以降最高値」とは、調査が開始された2015年1月から現在までの期間における最高値を意味します。

「全エリア・全面積帯で最高値」がなぜ画期的なのか

今回の2026年5月データで注目すべきは、首都圏1都3県のアパートが、シングル向き(30㎡以下)からファミリー向き(50㎡超)まで全ての面積帯で、しかも全エリアで同時に最高値を更新した点です。これは調査開始以来初めての出来事で、家賃上昇が一部のエリアや間取りに限られた現象ではなくなったことを示しています。これまでの最高値更新は東京23区など一部エリアが牽引する形でしたが、今回は首都圏全域に上昇が広がりました。

もくじ

なぜ今、アパートの家賃が上がっているのか

マンション家賃の高騰が「割安なアパート」へ需要を押し出した

今回の上昇を読み解く最大のキーワードが「マンションからの需要シフト」です。東京23区では賃貸マンションの家賃が記録的な水準まで高騰しており、シングル向きで月10万円超、ファミリー向きでは25万円を超える水準に達しています。マンションが手の届きにくい価格になったことで、相対的に割安なアパートへと入居者の需要が流れ込み、アパートの家賃を押し上げました。実際、23区のアパートはシングル向きでマンションより3万円以上安い水準にあり、コスト意識の高い入居者の受け皿になっています。

建築コスト上昇が新築供給を抑制している

近年、木材・鉄鋼などの建築資材の価格が大幅に上昇し、職人・施工業者の人件費も高騰しています。その結果、新築物件の供給数が伸び悩み、賃貸市場全体の需給が引き締まっています。供給が限られれば、既存物件の家賃は自然と押し上げられます。

都市部への人口集中とインフレの影響

首都圏への人口集中は依然として続いており、進学・就職・転勤を機に上京する単身世帯や、外国人入居者の増加が賃貸需要を下支えしています。加えて、光熱費・管理費・修繕費などのランニングコスト上昇分をオーナーが家賃に転嫁する動きも、市場全体の家賃水準を底上げしています。

家賃上昇は不動産投資家にとって何を意味するのか

「表面利回り」が改善するしくみ

不動産投資で最初に覚えたい指標が「表面利回り」です。計算式はシンプルです。

表面利回り(%)= 年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100

たとえば、購入価格2,000万円の物件で年間家賃収入が100万円なら、表面利回りは5.0%です。ここで家賃が月1万円上がると、年間収入は12万円増え112万円になります。購入価格が変わらなければ、利回りは5.6%に改善します。

コワニ
数値にすると、家賃上昇のありがたさが実感できますね!

つまり、家賃が上昇するほど、同じ物件から得られる収益率が高まるのです。これが「家賃上昇は投資家にとって追い風」と言われる理由です。特に今回のように割安なアパートへ需要が向かう局面では、アパート投資の妙味が増します。

家賃が上がっても利回りが改善しないケースとは?(初心者注意点)

ただし、家賃上昇が広く知られると、物件価格も連動して上昇することがあります。家賃が5%上がっても、物件価格が10%上がっていれば、購入時の利回りはむしろ低下します。

また、すでに入居中の物件では、既存の入居者に対して即座に家賃を引き上げることは法律上難しく、効果が出るまでに時間がかかります。「家賃が上がっているから投資してみよう」と焦って動くのは禁物です。

コワニ
わかってはいるけど、つい焦りたくなるんですよね…

アパート投資が今、注目される理由

マンションより手頃な価格帯で始められる

アパートはマンションに比べて物件価格が手頃なため、初めての不動産投資の入り口として選びやすい資産です。今回のデータが示すように、入居者側も「マンションは高いからアパートを」と考える層が増えており、割安なアパートに需要が集まる構造は、空室リスクを抑えたい初心者投資家にとって追い風と言えます。木造・軽量鉄骨造のアパートは取得しやすく、利回りも確保しやすい傾向があります。

シングル向き・カップル向きは需要の裾野が広い

アットホームの調査では、30㎡以下を「シングル向き」、30〜50㎡を「カップル向き」、50〜70㎡を「ファミリー向き」と区分しています。単身・少人数世帯向けの面積帯は入居者の母数が大きく、空室が出ても次の入居者が見つかりやすいのが特徴です。今回は全面積帯が上昇しましたが、初心者はまず需要の厚いシングル・カップル向きから検討するのが堅実です。

家賃上昇局面でアパート投資を始める際の注意点

高値づかみを避けるための物件選びの基本

家賃上昇のニュースを受けて物件価格が上がっている局面では、「利回りの逆算」を必ず行うことが大切です。自分が目標とする利回り(たとえば表面利回り7%以上)を決めたうえで、その利回りを実現できる価格帯の物件のみを検討対象とする——このシンプルな原則が、高値づかみを防ぐ最大の防御策です。

また、築年数・立地・最寄り駅からの距離など、長期的な賃貸需要を左右する要素も必ず確認しましょう。家賃水準が高くても、需要が薄いエリアでは空室が長期化するリスクがあります。

空室リスクと管理コストは必ず試算しよう

表面利回りはあくまで「満室想定」の数字です。実際には空室期間や管理費・修繕費が発生するため、手元に残る収益は表面利回りより低くなります。目安として、実質利回り=表面利回りから1〜2%程度引いた水準を想定しておくと現実的です。

特に初心者の場合は、管理会社に運営を委託するケースが多く、管理委託料として家賃収入の5〜10%程度がかかることも念頭に置いておきましょう。

まとめ:家賃上昇トレンドは「投資を検討するサイン」になりうる

2026年5月、首都圏の賃貸アパート家賃は全エリア・全面積帯で調査開始以来初の最高値を更新しました。マンション家賃の高騰がアパートへの需要シフトを生み、上昇が首都圏全域に広がったことが今回の特徴です。建築コスト上昇・人口集中・インフレという構造的要因も重なり、この上昇トレンドには一定の持続性が期待されます。

家賃上昇は表面利回りの改善につながる一方で、物件価格の上昇や既存入居者への家賃転嫁の難しさといった課題も伴います。

重要なのは、ニュースに踊らされず、利回り・立地・空室リスクを冷静に試算したうえで判断することです。不動産投資は「情報を正確に読み解ける人」が有利な世界です。今回のようなデータを一次資料から確認する習慣をつけることが、成功への近道になります。

もくじ