マイホームの購入を検討していると、必ず耳にするのが「住宅ローン控除」という言葉です。名前は知っていても、実際にいくら戻ってくるのか、どんな手続きが必要なのかまで正確に説明できる方は多くありません。しかも2026年(令和8年)の税制改正によって、適用期限や借入限度額の扱いが変わりました。
この記事では、住宅ローン控除の基本的な仕組みから借入限度額の一覧、申請方法、つまずきやすい注意点までを順番に整理していきます。これから住宅を購入される方が、資金計画を立てるうえでの土台としてお役立ていただければ幸いです。

住宅ローン控除とは
制度の概要(正式名称・税額控除の仕組み)
住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」といいます。住宅ローンを借り入れてマイホームを取得した場合に、年末時点のローン残高の0.7%を所得税(引ききれない分は翌年の住民税)から差し引ける制度です。
ここで押さえておきたいのが、この制度が「所得控除」ではなく「税額控除」だという点です。所得控除は課税対象となる所得を減らす仕組みですが、税額控除は計算された税額そのものから直接差し引きます。そのため、同じ金額でも税額控除のほうが減税のインパクトは大きくなります。
住宅取得時の初期負担を軽くし、良質な住宅の取得を後押しすることが制度の目的です。金利や住宅価格が上昇している現在、購入者にとって数少ない大きな支援策のひとつといえます。
減税を受けられる金額のイメージ
具体的な数字で見てみましょう。年末時点のローン残高が3,000万円で、借入限度額の範囲内であれば、その年の控除額は3,000万円×0.7%=21万円となります。
ただし、注意点が2つあります。1つ目は、控除額は「借入限度額」を上限に計算されることです。残高が4,000万円あっても、住宅の区分に応じた限度額が3,500万円なら、計算のベースは3,500万円までとなります。
2つ目は、実際に戻る金額はその方が納めた税額が上限になることです。所得税から控除しきれなかった分は翌年度の住民税から差し引かれますが、こちらにも上限が設けられています(課税総所得金額等の5%、最高97,500円)。年収がそれほど高くない方の場合、限度額いっぱいの控除を受けきれないケースもあります。

住宅ローン控除の仕組み
控除率と控除期間
控除率は年末ローン残高の0.7%で統一されています。控除期間は新築住宅であれば原則13年間、既存住宅(中古住宅)は住宅の省エネ性能によって10年間または13年間です。
住宅の種類別に見る借入限度額
借入限度額は「住宅の省エネ性能」と「世帯の属性」の組み合わせで決まります。令和8年(2026年)から令和12年(2030年)に入居する場合の区分は次のとおりです。
新築住宅
| 住宅の区分 | 借入限度額 | 控除期間 |
|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円(5,000万円) | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円(4,500万円) | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円(3,000万円) | 13年 |
なお新築の「その他住宅」については、2023年12月31日までに建築確認を受けたものに限り、借入限度額2,000万円・控除期間10年間の枠が残されています。
買取再販住宅(宅地建物取引業者が一定の増改築等を行った既存住宅)は、増改築後に省エネ基準適合住宅以上の性能を備えた場合に、新築住宅と同等の水準で控除を受けられます。この場合は増改築等工事証明書の提出も必要になります。
既存住宅(中古住宅)
| 住宅の区分 | 借入限度額 | 控除期間 |
|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 3,500万円(4,500万円) | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円(4,500万円) | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円(3,000万円) | 13年 |
| その他住宅 | 2,000万円 | 10年 |
カッコ内は、子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せ後の金額です。子育て世帯とは19歳未満の扶養親族がいる方、若者夫婦世帯とは配偶者のいる40歳未満の方(または40歳未満の配偶者がいる40歳以上の方)を指します。
省エネ性能の区分についても押さえておきましょう。ZEH水準省エネ住宅は断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上、省エネ基準適合住宅は断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上が基準です。
コワニ2026年度税制改正による変更点
令和8年度税制改正では、住宅ローン控除に次のような見直しが行われました。
第一に、適用期限が5年間延長され、令和8年1月1日から令和12年12月31日までの入居分が対象になりました。第二に、省エネ性能の高い既存住宅について、借入限度額の引き上げ、子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せ措置の新設、控除期間の13年への拡充という3点の支援拡充が行われています。中古住宅の活用を後押しする方向性が明確に打ち出された形です。
第三に、床面積要件の緩和です。これまで新築住宅に設けられていた40平方メートル以上への緩和措置が、既存住宅にも適用されることになりました。ただし合計所得金額が1,000万円を超える方や、子育て世帯等への上乗せ措置を利用する方は50平方メートル以上が必要です。つまり40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅では、子育て世帯であっても借入限度額の上乗せは受けられない点に注意してください。
さらに、建築確認が令和10年以降の省エネ基準適合住宅は適用対象外となること、令和10年以降に入居する場合は土砂災害特別警戒区域などの「災害レッドゾーン」に建つ新築住宅が対象外になることも決まっています。今後の住宅選びでは、性能と立地の両面が控除の可否に直結する設計になったといえます。


適用を受けるための要件
対象となる人の要件(所得・居住・床面積など)
主な要件は次のとおりです。
- 控除を受ける方が主として居住する家屋であること
- 合計所得金額が2,000万円以下であること
- 引き渡しまたは工事完了から6か月以内に入居し、その年の12月31日まで引き続き居住していること
- 借入金の償還期間が10年以上であること
- 登記簿上の床面積要件を満たすこと
- 店舗等併用住宅の場合、床面積の2分の1以上が居住用であること
対象となる住宅の要件(新築・中古・増改築)
対象となるのは新築住宅、既存住宅、買取再販住宅、そして一定の増改築・リフォームです。
既存住宅の場合は追加の要件があります。生計を一にする親族など特別な関係がある方からの取得ではないこと、贈与による取得ではないことが求められます。また1982年1月1日以前に建築された住宅では、耐震基準適合証明書や既存住宅売買瑕疵担保責任保険の付保証明書など、現行の耐震基準を満たすことの証明書類が必要です。
住宅ローン控除の申請方法
1年目は確定申告が必要
会社員の方であっても、入居した年分については必ずご自身で確定申告を行う必要があります。ここを見落として1年目の控除を取り逃がすケースが少なくありません。入居した翌年の確定申告期間に、住所地を所管する税務署へ書類を提出します。



2年目以降は年末調整でOK(会社員の場合)
給与所得者の方は、2年目以降は勤務先の年末調整で控除を受けられます。税務署から届く控除証明書と、金融機関が発行する年末残高証明書を勤務先に提出すれば手続きは完了です。個人事業主の方は、毎年確定申告で申請を続けることになります。
ここで押さえておきたいのが、令和6年から順次導入されている「調書方式」です。これは金融機関が年末残高の情報を税務署へ直接提出する仕組みで、対象となる方には金融機関から年末残高証明書が発送されなくなります。ただし、借入先の金融機関がまだ調書方式へ移行していない場合は、従来どおり年末残高証明書の交付を受けて提出する必要があります。ご自身がどちらの方式になるのかは、借入先の金融機関に確認しておくと安心です。
申請に必要な書類一覧
1年目の確定申告で共通して必要になるのは次の書類です。
- 確定申告書
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅ローンの年末残高証明書(調書方式の場合は税務署から通知される年末残高情報)
- 工事請負契約書や売買契約書等の写し
- 登記事項証明書
これに加えて、住宅の区分に応じた証明書類が必要になります。長期優良住宅なら認定通知書の写しなど、ZEH水準省エネ住宅や省エネ基準適合住宅なら建設住宅性能評価書の写しまたは住宅省エネルギー性能証明書のいずれか1つ、といった具合です。補助金の交付を受けた場合や贈与の特例を併用する場合は、それぞれを証明する書類も添えます。


申請時に注意したいポイント
省エネ性能の証明書類の確認漏れ
もっとも起こりやすいのが、性能の証明書類をめぐるトラブルです。新築住宅で証明書を用いる場合、家屋の取得の日までに証明のための調査(評価)が終わっている必要があります。引き渡し後に慌てて動いても間に合わないことがあるため、売買契約や工事請負契約の前に、どの区分で申請するのか、証明書は誰がいつ手配するのかを事業者へ確認しておくのが安全です。
建設住宅性能評価書や住宅省エネルギー性能証明書は発行に費用と時間がかかります。分譲マンションや建売住宅の場合は、分譲事業者側の対応が必要になる場面もあります。
借入限度額の年度基準の勘違い
借入限度額は「入居する年」を基準に判定されます。契約した年ではありません。改正の前後をまたぐタイミングで購入を検討している方は、資金計画を立てる際に参照している数字がどの入居年のものなのかを必ず確認してください。前年の限度額を前提に借入額を決めてしまうと、想定していた控除額に届かない事態が起こり得ます。
住宅ローン控除に関するよくある質問
Q. 繰り上げ返済をすると控除は受けられなくなりますか。
繰り上げ返済そのものが問題になるわけではありませんが、返済期間が当初の借入時から通算して10年未満になると、以後は控除の対象外となります。期間短縮型の繰り上げ返済を検討する際は、この点に注意が必要です。



Q. 転職しても控除は続きますか。
控除の適用要件に勤務先は関係しないため、転職しても控除自体は続きます。ただし年末調整の手続き先が変わるため、控除証明書と年末残高証明書は新しい勤務先へ提出してください。転職のタイミングによっては、その年だけ確定申告が必要になる場合もあります。
Q. 夫婦でペアローンを組んだ場合はどうなりますか。
それぞれが自分名義のローン残高について控除を受けられます。ただし合計所得金額2,000万円以下という所得要件は、夫婦それぞれについて判定されます。床面積は住宅そのものの条件なので分けて考えることはありませんが、40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅では合計所得金額1,000万円以下の年分に限られるため、収入によっては片方だけが控除を受けられるケースもあります。


まとめ
住宅ローン控除は、年末ローン残高の0.7%を最長13年間、税額から直接差し引ける制度です。2026年度の税制改正で適用期限が2030年末まで延長され、省エネ性能の高い既存住宅への支援も拡充されました。
一方で、控除額は住宅の省エネ性能と世帯の属性、そして入居する年によって大きく変わります。新築の省エネ基準適合住宅が将来的に対象外となる方向性も示されており、「どの性能の住宅を、いつ取得するか」が減税額を左右する時代になったといえるでしょう。
住宅は人生で最も大きな買い物です。物件を決める前の段階で、その住宅がどの区分に当てはまるのか、必要な証明書は取得できるのかを確認しておくことが、確実に控除を受けるための最短ルートになります。最新の制度内容は国土交通省や国税庁のウェブサイトで公表されていますので、実際の申請にあたっては必ず一次情報もあわせてご確認ください。
参考: 国土交通省「住宅ローン減税」、国税庁「住宅借入金等特別控除」








