「東京のマンションは、家賃までどんどん上がっている」——そう感じている方は少なくないのではないでしょうか。実際に、不動産調査会社の東京カンテイが2026年7月に発表したデータでは、東京23区の分譲マンション賃料は6月に前月比0.8%高の1平方メートルあたり5,118円となり、2カ月ぶりに上昇しました。
専有60平方メートルのファミリータイプに当てはめると、月額はおよそ30万円。決して手が届きやすい水準とは言えません。それでも需要は底堅く、賃料は高い水準を保っています。
コワニこの記事では、そもそも「分譲マンションの賃料」とは何かという基本から、東京23区の相場と最近の推移、賃料が上がってきた理由、そして今後の見通しまでをわかりやすく整理します。あわせて、これから所有物件を貸そうと考えている「貸す側」の視点で押さえておきたいポイントも紹介します。


そもそも「分譲マンションの賃料」とは?賃貸マンションとの違い
分譲マンションの賃料とは、本来は購入して住むために売り出されたマンションの一室を、その持ち主が第三者に貸し出す際に設定する家賃のことです。つまりオーナーは実際の入居者ではなく、部屋を「投資・運用」する立場になります。
東京カンテイの集計では、専有面積30平方メートル未満の住戸や事務所・店舗用を除いた「ファミリータイプ」を対象に、月額の募集賃料を1平方メートルあたりの単価に換算して算出しています。エリアや広さの異なる物件を横並びで比較できるため、市場全体の動きを読み取るうえで便利な指標です。
いわゆる「賃貸マンション」が最初から貸すことを前提に建てられているのに対し、分譲マンションは購入者が住むことを想定して設計されています。そのため設備やセキュリティ、共用部のグレードが高い傾向にあり、「分譲賃貸」として人気を集めやすいという特徴があります。
【2026年最新】東京23区の分譲マンション賃料の相場と推移
まずは足元の数字を確認しましょう。東京カンテイによると、2026年6月の東京23区の分譲マンション賃料は前月比0.8%高の5,118円/㎡でした。堅調な需要を背景に、2カ月ぶりの上昇となっています。
この水準がどれほどのものかは、少し長い目で見るとよくわかります。東京カンテイの年間集計では、2025年の東京23区の平均賃料は前年比プラス10.0%の4,723円/㎡と、大きく跳ね上がりました。首都圏全体でも3,803円/㎡(前年比プラス5.6%)と、上昇が鮮明でした。
一方で、2026年に入ってからの月次の動きは一本調子ではありません。東京カンテイの月別データで東京23区の推移を追うと、次のように上昇と下落を繰り返しています。
| 2026年 | 前月比 | 賃料(円/㎡) |
|---|---|---|
| 1月 | +1.8% | 5,041 |
| 2月 | +2.1% | 5,149 |
| 3月 | -2.1% | 5,042 |
| 4月 | +0.9% | 5,087 |
| 5月 | -0.2% | 5,078 |
| 6月 | +0.8% | 5,118 |
1月・2月と上昇が続き、2月には5カ月連続のプラスとなりました。しかし3月に半年ぶりの下落へ転じ、その後は上昇と下落を交互に繰り返しています。6月の5,118円/㎡も、2月につけた5,149円/㎡には届いておらず、最高値を更新したわけではありません。
つまり、2025年の急騰を経て、2026年は5,000円台の高値圏で一進一退を続けている、というのが現在地です。「上がり続ける」というより、「高い水準を保ちながらも、上値の重さが意識され始めている」というイメージが実態に近いと言えるでしょう。
東京23区の賃料が上がってきた5つの理由
なぜ、東京23区の分譲マンション賃料はここまで水準を切り上げてきたのでしょうか。主な要因を5つに整理します。


① マンション価格そのものの高騰
最大の背景は、マンション価格の高騰です。東京23区の新築マンションは、平均価格が1億円を超える月も珍しくなくなりました。物件を貸して運用する場合、取得価格に対して一定の利回りを確保する必要があるため、購入価格が上がれば、家賃もそれに見合う水準へ引き上げざるを得ません。価格の上昇が、賃料を後押しする構図です。
② 「買えない層」が賃貸へ流れ、需要が増加
価格が上がりすぎた結果、購入をあきらめて賃貸を選ぶ世帯が増えています。住宅ローン金利の先高観もあり、「無理に買うより借りる」という判断が広がっているのです。買い控えた実需層が賃貸市場に流れ込むことで、借り手の数が増え、家賃を押し上げています。
③ 新規供給の不足
需要が強い一方で、供給は細っています。東京都の新設住宅着工戸数は2025年まで3年連続で減少し、なかでも分譲マンションは前年比8.9%減と落ち込みました。土地取得競争の激化、建築費や人件費の高騰が重なり、デベロッパーが物件を増やしたくても増やせない状況が続いています。「借りたい人は多いのに、部屋が足りない」という需給の逼迫が、賃料の下支えになっています。
④ 20〜30代を中心とした人口の流入
東京への人口集中も見逃せません。東京23区では、2025年の1月から11月までの合計で約10万6千人の転入超過を記録しました。特に賃貸契約の機会が多い20〜30代の流入が続いており、新規契約のたびに家賃を引き上げやすい環境が生まれています。
⑤ 「定期借家契約」の広がり
近年、首都圏では期間を定めて貸し出す「定期借家契約」が増えています。通常の契約と違って更新がなく、条件が折り合わなければ再契約せずに退去してもらえるため、オーナーにとっては家賃を見直しやすい仕組みです。こうした契約形態の広がりも、賃料が上がりやすい土壌をつくっています。



2026年以降、賃料はどうなる?今後の見通し
気になるのは、この先も賃料が上がり続けるのかという点です。
東京カンテイの担当研究員は、2026年について「所得や賞与の伸び、人口流入の勢いがやや弱まりそうで、2025年ほどの値上がりは見込みにくい」との見方を示しています。実際、2026年の月次データが5,000円台で上下しているのも、上昇の勢いが一服しつつあることを映していると言えます。
また、賃料が上がりすぎた反動で、借り手が無理のない価格帯や立地を選ぶ動きも出てきました。高額な都心の物件はかえって決まりにくくなり、エリアや価格帯によって「決まる物件」と「決まらない物件」の差が開く二極化が進む可能性があります。
一方で、インフレ基調が続いていること、建築費の高止まりや供給不足がすぐには解消しないこと、都心への人の集中が当面続くとみられることから、「これまで上がってきたエリアは今後も底堅い」との見方も根強くあります。総じて言えば、2025年のような急騰は一段落しつつも、高い水準を保ちながら緩やかな上昇・横ばいへと移行していく、というのが多くの専門家の見立てです。
「貸す側」が押さえておきたい3つのポイント
最後に、所有する分譲マンションを貸そうと考えている方に向けて、実務的なポイントを3つ紹介します。
① 利回りは「今の価格」で冷静に計算する
賃料が上がっているのは、貸す側にとって追い風です。ただし、新たに購入して貸す場合は注意が必要です。表面利回りは「年間の家賃収入 ÷ 物件価格」で計算しますが、家賃以上に物件価格が上がっている局面では、購入価格ベースの利回りはむしろ低くなりがちです。「賃料が高い=儲かる」と単純に考えず、今の価格でいくらの利回りが取れるのかを冷静に見極めることが大切です。


② 賃料改定の余地を残すなら「定期借家」も検討
将来的に賃料を見直したい、あるいは自分で住み直す予定があるといった場合には、定期借家契約も選択肢になります。契約期間を区切れる分、賃料や利用計画の柔軟性は高まります。ただし、借り手にとっては条件がやや不利になるため、その分だけ入居付けが難しくなる面もあります。メリットとデメリットを比べて選びましょう。
③ 「強気すぎる設定」は空室リスクに直結する
相場が上がっているからといって、周辺より大きく高い家賃を設定すると、なかなか入居者が決まらず空室が長引くおそれがあります。前述のとおり、借り手は身の丈に合った物件を選ぶ傾向を強めています。近隣の同条件の物件と比べながら、需要に見合った適正な賃料を設定することが、結果的に安定した収益につながります。





まとめ
2026年6月、東京23区の分譲マンション賃料は前月比0.8%高の5,118円/㎡と、2カ月ぶりに上昇しました。2025年の急騰(前年比プラス10.0%)を経て、足元は5,000円台の高値圏で一進一退の展開が続いています。
賃料が上がってきた背景には、①マンション価格の高騰、②買えない層の賃貸シフト、③供給不足、④人口の流入、⑤定期借家の広がりという5つの要因がありました。今後は上昇の勢いが和らぎつつも、高い水準は保たれるとの見方が有力です。
これから物件を貸す方は、今の価格に基づいた利回りの見極めと、空室リスクを避ける適正な賃料設定を意識しておきたいところです。市場の数字を定点観測しながら、無理のない賃貸経営を目指していきましょう。








