「親が元気なうちに、実家をどうするか話し合っておいたほうがいいのだろうか」——そう感じている方は、あなただけではありません。近年、災害や建物の老朽化をきっかけに「実家じまい」を考える人が急増しています。本記事では、最新の調査データをもとに、その背景や理由、そして後悔しないための進め方まで、わかりやすく解説します。
調査で判明「4割近くが実家じまいを検討」
不動産仲介のネクスウィル(東京・港)が2026年6月26日に発表した「災害・住居環境」に関する実態調査によると、災害リスクや建物の老朽化を懸念して、親が住まなくなった実家を処分する「実家じまい」を検討したことがある人は、全体の42%に上りました。調査は2026年6月15日、全国の30〜60歳の男女を対象にインターネットで実施され、600人から回答を得たものです。
4割を超える人が実家じまいを意識しているという結果は、決して他人事ではない現実を映し出しています。少子高齢化が進むなか、親の家をどう引き継ぐか、あるいは手放すかは、多くの家庭に共通する悩みとなっているのです。

「いつかは必要」と考える人が最多の25%
検討状況を詳しく見ると、最も多かったのは「まだ話し合ってはいないが、自分の中でいつかは必要だと考えている」という回答で、25%を占めました。続いて「家族と具体的に話し始めた」が11%、「具体的に不動産会社に相談するなど、検討を進めている」が6%でした。これら3つを合計すると42%となり、段階の差こそあれ、4割を超える人が実家じまいを意識していることがわかります。
注目すべきは、4分の1の人が「いつかは必要」と感じながらも、まだ行動に移せていないという点です。心のどこかで気にかかりながらも、何から手をつければよいかわからず、先延ばしにしてしまっている——そんな実情が浮かび上がります。
コワニなぜ今、実家じまいなのか?背景にある2つの不安
激甚化する自然災害への懸念
近年、地震や台風、豪雨といった自然災害が全国各地で頻発し、その規模も大きくなっています。ニュースで被災地の映像を目にするたびに、「もし実家が被害に遭ったら」と不安を覚える人は少なくありません。
特に、遠方に住んでいて頻繁に様子を見に行けない場合、災害のたびに実家の安否を気にかけることは大きな精神的負担になります。こうした「もしも」への備えとして、住まなくなった実家を早めに整理しておきたいと考える人が増えているのです。
建物の老朽化と管理の限界
もう一つの大きな要因が、建物の老朽化です。人が住まなくなった家は、換気や手入れがされないことで急速に傷んでいきます。屋根や外壁の劣化、庭木の繁茂、シロアリの発生など、放置すればするほど管理の手間と費用はかさみます。
親が高齢になり、自分自身も仕事や子育てで忙しいなか、実家の維持管理を続けることは容易ではありません。「このまま持ち続けても管理しきれない」という現実的な限界が、実家じまいを後押ししています。
実家じまいを検討する本当の理由
最多は「近隣住民に迷惑をかけたくない」
同調査で検討理由を尋ねたところ、最も多かったのは「近隣住民に迷惑をかけるのが怖いから」で、36%を占めました。老朽化した空き家は、倒壊の危険や、屋根・外壁の飛散、雑草や害虫の発生などで、近隣に迷惑をかけてしまう恐れがあります。
長年お世話になった地域の方々に迷惑をかけたくない——そんな責任感や気配りが、実家じまいを決断する動機になっているのです。日本人らしい、周囲への思いやりが表れた結果ともいえるでしょう。



「実家は大丈夫か」という心配のストレスから解放されたい
次いで多かったのが、「地震や台風などの災害のたびに『実家は大丈夫か』と心配するストレスを無くしたいから」で、34%でした。
災害が起きるたびに胸がざわつき、電話をかけて安否を確認する。そんな繰り返しから解放されたいという切実な思いが、多くの人の本音として表れています。実家じまいは、単なる「物件の処分」ではなく、心の安心を取り戻すための選択でもあるのです。
実家じまいを先延ばしにするとどうなる?
空き家放置による資産価値の下落
実家じまいを先延ばしにする最大のデメリットは、資産価値の下落です。建物は年月とともに劣化し、放置された空き家はさらに価値を失っていきます。「いずれ売ろう」と思っているうちに、売却価格がどんどん下がってしまうケースは珍しくありません。


特定空家に指定されるリスクと固定資産税
管理が行き届かず、著しく老朽化した空き家は、行政から「特定空家」に指定される可能性があります。さらに2023年12月の法改正では、その前段階にあたる「管理不全空家」も対象に加わりました。これらに指定されて自治体から勧告を受けると、これまで受けられていた固定資産税の住宅用地特例が外れ、翌年度から土地の固定資産税が最大で6倍に跳ね上がります(建物分を含めた実質的な負担増は、おおむね3.5〜4倍程度)。指定されてすぐに増税されるわけではありませんが、放置し続ければ金銭的に大きなリスクを負うことになります。
被害発生後の金銭的・精神的負担
ネクスウィルは今回の調査結果について、「自然災害の激甚化や住宅の老朽化が社会課題となる中、被害発生後の金銭的・精神的負担を軽減するためにも、早い段階から住まいの管理や将来設計について考える重要性が高まっている」とコメントしています。
災害で建物が損壊してからでは、解体費用や近隣への賠償など、想定外の出費が発生しかねません。問題が起きる前に動くことが、結果的に負担を最小限に抑えることにつながります。
実家じまいの進め方——4つのステップ
①家族で話し合い、意思を確認する
まず大切なのは、家族でしっかりと話し合うことです。実家をどうしたいのか、親自身はどう考えているのか。相続人となる兄弟姉妹の意向も含め、早めに気持ちを共有しておくことで、後々のトラブルを防げます。
②実家の現状(権利関係・価値)を把握する
次に、実家の登記や権利関係、おおよその資産価値を確認します。名義は誰になっているか、住宅ローンは残っていないか、土地の境界は明確か。こうした基本情報を整理しておくことが、スムーズな手続きの土台になります。
③処分方法を選ぶ(売却・解体・活用)
実家じまいの方法には、そのまま売却する、解体して更地にして売る、賃貸として活用するなど、いくつかの選択肢があります。立地や建物の状態、家族の希望に応じて、最適な方法を検討しましょう。
④不動産会社など専門家に相談する
自分たちだけで判断が難しい場合は、不動産会社や司法書士などの専門家に相談するのが確実です。市場価格の査定や手続きの進め方について、プロの視点からアドバイスを受けることで、安心して進められます。
実家じまいを始めるベストなタイミング
親が元気なうちに話し合うことの重要性
実家じまいで最も後悔が多いのが、「親が元気なうちに話しておけばよかった」という声です。親の判断能力がしっかりしているうちであれば、本人の意向を確認しながら、円満に話を進められます。相続が発生してからでは、手続きが複雑になりがちです。





「早めの将来設計」が負担を減らす
実家じまいは、時間に余裕を持って取り組むほど、選択肢が広がり、負担も軽くなります。焦って安値で手放すことも、災害後に慌てて対処することも避けられます。「まだ早い」と思う今こそ、将来設計を始める絶好のタイミングなのです。


まとめ——実家じまいは「安心」への第一歩
今回の調査からは、4割を超える人が災害リスクや老朽化を背景に実家じまいを検討している実態が明らかになりました。その根底にあるのは、「近隣に迷惑をかけたくない」「災害のたびに心配したくない」という、家族や地域を思う気持ちです。
実家じまいは、決してネガティブな作業ではありません。大切な実家と向き合い、家族の未来を守るための前向きな一歩です。まずは家族との会話から、あなたも始めてみませんか。








